——コンコンコンコンコンッ!

 そこでノックの音が執務室へ響いた。今日は午前中の面会の予定はなかったはずだ。アイザックへ目配せして対応させる。

「恐れ入ります、本日は面会の予定はございませんが」
「本日はラティシア様に関してのご報告があるのだ! フィルレス殿下へ至急の面会を希望する!!」
「構わない、入れ」

 そろそろ来る頃かと思っていた。アイザックへ視線を向けると、すぐに映像記録の水晶を起動させていた。

 興奮した様子の五名の貴族たちが、ズカズカと執務室へ入り僕の机の前に並ぶ。真ん中に立っている貴族が中心人物なのか、書類の束をバンッと音を立てて机上へ叩きつけた。

 地味にうるさくて苛立ったけれど、いつものように穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。

「約束もなしに来るとは、緊急事態なのかな?」
「そうです! フィルレス殿下! あのラティシア・カールセンはとんだ嘘つき女です!!」
「根拠は?」

 ラティを悪くいう言葉を耳にして思わず、低く冷たい声になってしまった。貴族たちはゴクリと唾を飲み込み、言葉を続ける。