「本当に違うよ。クレームをつけてきた貴族たちは反対派の奴らだから」
「……え?」
「わざと怪我をしてラティに治療させて、後でクレームを入れて治癒の腕に難癖をつけて評判を貶めたかったんだよ。まあ、それについては近々手は打つけどね」
「そんな、まさか……怪我もわざとなんて……」

 確かに私を指名する貴族が多かったけれど、それは『癒しの光(ルナヒール)』があるからだと思っていた。それでもクレームが止まなくて自信をなくしそうになっている。

「ラティの治癒魔法が別格だと、その実力は以前より磨きがかかっていると僕は知っている。誰よりも努力して、誰よりも気高い志でラティが人々を治療しているのもわかっているよ」

 フィル様の言葉に心がふわっと軽くなる。

 理解してくれる人がいる。私の頑張りを見てくれる人がいる。その事実が自信をなくしそうになっていた私の心を鼓舞してくれた。

「フィル様……ありがとうございます」

 愛しい婚約者がいとも簡単に私の心を軽くしてくれる。

「ラティを悲しませた反対派は、そろそろおとなしくなるはずだから安心して」

 衝立の向こうのフィル様は黒い笑みを浮かべているのだろうと想像したら、笑いが込み上げた。