笑みを浮かべて、次回のクレームを防ぐためにもう一度全身に治癒魔法をかける。怪我にしても病気にしても、悪い部分は脇腹の青あざだけだった。軽い打撲なので本来は治癒魔法も必要ないくらいの怪我である。

 ヘルキス子爵を包み込んでいた淡く白い光が収まり、私は声をかけた。

「これで全身の治療が終わりました。それではこちらに完治証明のサインをお願いしたいのですが……その前に、お召し物をすべて脱いでいただけますか? カーテンでしっかりと目隠しいたしますのでご安心くださいませ」

 治癒室は大きな部屋にベッドや椅子が等間隔で並べられているだけで、隣との間仕切りがない。その他に治癒士たちが事務仕事をするための机がチームごとにまとめて並んでいるだけだ。

 必要に応じて等間隔で設置されているカーテンで区切るか、特別室のような個室で診察や治療にあたる。どこで治療するのかは怪我や病気の程度、または治癒室や患者の状況によって臨機応変に対応するのだ。

「は? なんだと? なぜわしが脱ぐ必要があるのだ!?」
「完治証明にサインをいただくためです。二度とこのような問題が起きないようヘルキス子爵にもご協力いただき、完全に治癒したか確認した上でサインをいただきたいと存じます。また私ひとりでは見落とす可能性がございますので、立ち合いの治癒士も同席させていただきます」