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 王妃様が手紙を残して突然と姿を消したその頃、聖女であるわたしは反対派貴族の領地を周り、ユニコーンとともに結界を張っていた。

 加えて父にも政治的な融通も利かせてもらい、金銭面でも反対派貴族たちが有利になるよう手を回している。ここまでしておけば、確実にわたしの味方になってくれるはずだ。

 あのふたりを引きずり下ろす準備が順調に進み、気分よく王都へ戻ってきたのも束の間、王妃様の事件を国王陛下の執務室で聞かされた。

「どうして王妃様は突然国に帰られたのですか!? わたしたちの計画はこれからだというのに……!」
「わしも今朝ようやくなにがあったのか報告を受けたのだ。王妃はわしが用意した毒薬を飲んであの女を追い詰めるつもりが、自作自演だと見破られフィルレスに脅され国を出たそうだ。万全を期して手を回したというのに、まったく使えない奴だ」

 わたしが貴族たちの領地に結界を張っている間、王妃はしくじり追いやられてしまった。
 本当ならこの時点であの女は王妃暗殺の罪で処罰されているはずだったのに、これでは計画を練り直さなければならない。