アルテミオ様の豹変ぶりに王妃様だけでなく、私もついていけていない。あんなに慕っているように見えたのに、母を切り捨てたということだろうか。

 そこでアルテミオ様は、なぜか扉の方へ向かって声をかけた。

「兄上、満期なのでもういいですよね? そろそろ引導を渡してください」
「そうだね。戯言(ざれごと)を聞くのはもう飽きたな」

 開けっぱなしの扉から現れたのは、背筋が凍るほど冷めた瞳をしたフィル様だった。

 兄弟なのだから接点があるのはわかるけど、このやり取りはアルテミオ様が最初からフィル様の味方のように聞こえる。

「アルテミオ! 貴方はわたくしの味方でしょう!?」
「はあ……なにを言っているのですか? 私は最初から兄上の味方ですよ」
「なっ、まさか……!」
「王妃様、僕とアルテミオは幼い頃から仲がよかったのですよ。ラティに手を出さなければ、もう少し王妃として楽しめたのに浅はかですね」

 アルテミオ様とフィル様の言葉に王妃様はなにも言えなくなっていた。ハクハクと口は動くものの、なにも言葉が出てこない。それほどの衝撃を受けたようだった。

「では最後の慈悲として選択肢を与えます」