「遅いわよ! 私がちゃんと治っているか早く診なさい!」
「申し訳ございません。では失礼いたします」

 王妃様の専属治癒士が丁寧に診察を始める。患者を動かしていい状態なのか判断できないので、この場で診断するのだ。

「ふむ、なるほど……では問診をしますが、最初にどのような症状が出てお倒れになったのでしょうか?」
「最初は……なんだか口がおかしくなって、そのうちにカップを持つのも上手くできなくなったわね。おかしいと思っているうちに身体の自由が効かなくなって、とにかく苦しかったのよ」
「カップを持てなかったというのは、力が入らなかったのでしょうか? それとも痺れや麻痺の症状でしたか?」
「指先がビリビリしていたから痺れかしら」

 専属治癒士は厳しい表情でさらに詳しく聞いていく。

「嘔吐もされたようですが……?」
「そうなのよ! 気持ち悪くて吐いたけれど、苦しくて息ができなくて身体に力も入らなかったわ。でも白い光に包まれたら楽になって、意識が遠のいたの」
「なるほど。症状を伺う限り、テトラキシン中毒ですね。治癒の痕跡も確認しましたが対処は完璧ですし、もう完全に解毒されています」