「はあ、ちょっとそちらにあるマカロンとマドレーヌを取ってちょうだい」
「承知いたしました」

 侍女たちは壁際で控えているため、私の目の前にあるお菓子をトングで皿に移して王妃様へ渡す。きっと嫌がらせの一環で、侍女がやるような仕事を私にやらせたいのだろう。

「ちょっと、この盛り付けはなんなのよ。本当にセンスの欠片もないわね」

 そんな嫌味を聞き流しながら、お茶の時間は進んでいく。

 しばらくして、王妃様がカチャリと大きな音を立ててカップを置いた。
 お茶や食事の際に大きな音を立てるのは、貴族のマナーとしてもっとも嫌われる部分だ。不思議に思って王妃様の様子を観察すると、どうも様子がおかしい。

「あ、う……ゔゔ……!」

 言葉にならない声を発して、王妃様はテーブルの上に突っ伏した。

「王妃様!?」
「お、王妃様!」

 室内いた侍女たちが真っ青になって駆け寄ってきた。

 私もすぐに状態を確認しようと近寄ったところで、王妃様はテーブルから崩れ落ちてクロスごと床へ横たわる。そのまま嘔吐し、苦しげな表情でだんだん呼吸も弱くなっているようだ。

 これは、毒物を摂取した——!?