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 私がフィル様に嫉妬の気持ちをぶつけた三日後、事件は起きた。

 この三日間はフィル様の執務室への書類配達がなく、王妃様の執務室へ行くと無謀な量の仕事を回されるだけで比較的平和に過ごせていた。

「今日は趣向を変えて、貴女の礼儀作法をチェックするわ」
「……はい、承知しました」

 王妃様からこんな申し出をされたのは初めてだ。もしかして私が書類仕事であまりダメージを受けていないから、やり方を変えたのかもしれない。

 王族としての礼儀作法はすでに教わっているけど、実践するのは初めてになる。些細なミスもしないように神経を張り巡らせた。

 椅子へかけるタイミングも、座り方も、目線の角度も、すべて気を抜くことなく教わった通りにこなしていく。

「あらあら、貴女それでも妃教育を受けたの? まったく洗練されていないし、田舎臭さが抜けきってないのよねえ……まあ、顔の作りもパッとしないから仕方ないのかしら」
「申し訳ございません」

 教師たちからは完璧だとお墨付きをもらっているので、文句をつけたいだけだと割り切ってスルーした。