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 フィルレス様の執務室を後にしたわたしは、沸々と湧き上がる怒りに任せて国王陛下と王妃様へ謁見を願い出た。

 聖女であるわたしを不当に扱うフィルレス様も、のうのうと婚約者を気取るカールセンの女も許せなかった。

 フィルレス様の態度が徐々に軟化して、わたしへ気持ちが傾いていると思っていたのにそれは嘘だったのだ。あんな屈辱的な言葉を吐かれたのは初めてで、思い出すたび怒りに震えた。

 あくまでもあの女を婚約者として大事にするなら、私にだって考えがある。

 聖女とユニコーンの存在があれば、この国の民衆たちはわたしの味方になるだろう。それに国王陛下と王妃様も後ろ盾になってくれる。

 いくら幻獣を従えたところで、その上に立つ人間には敵わないのだ。大地の神から認められたわたしを蔑ろにしたことを後悔させてやる。

 私室でイライラしながら待っていると、侍従がやってきて国王陛下の執務室まで案内された。重厚な扉が開かれ室内へ足を踏み入れる。国王陛下と王妃様が座る応接用のソファーに案内され、ゆっくりと腰を下ろした。