「ふふ、ラティ。準備は整ったよ」
「フィル様……もしかして途中から狙ってました?」
「なにを?」
「私が嫉妬すると狙ってブリジット様と距離を縮めていたんですか!?」

 やりかねない。この腹黒王太子なら、これくらいのことやりかねない。だとしたら私はいつものようにフィル様の策にハマったことになる。

「うーん。狙ってはいなかったけど、ブリジット嬢の腹の中を探る副産物ではあったよね」
「くっ……またうまく転がされてた……!」
「もういいかな? ほら、さっきのもう一度言って」

 珍しくフィル様がわくわくした様子で私を促してきた。嫉妬されるのがそんなに嬉しいのかと考えて、自分もそうかとため息を吐く。

「フィル様、もう他の女性を触れさせないでください。私だけの特権なんです」
「……やばい、めちゃくちゃ嬉しいな」

 大喜びのフィル様が離してくれず、王妃様の執務室に戻るのが遅れていやみ口撃がすごかったけれど、すっかり気持ちの安定した私は右から左にさらっと聞き流した。