そこ!? そこをもう一度言うの!?
 あんな嫉妬心がむき出しの幼稚な言葉をもう一度!?

「ラティの嫉妬なんて今後ないと思うから、お願い」
「私が嫉妬しては淑女として失格なのですが……」
「なにを言っているの。それだけ僕への深い愛があるってことでしょう? それを喜ばない男なんていないよ」

 私が学んだ淑女教育では感情を表に出すのは品がないと、バッサリ切り捨てられたのだけど。フィル様はそれを嬉しいと喜んでくれる。

 胸の中に渦巻いていた黒い感情はすっかり落ち着いたけれど、これ以上人前で醜態を晒したくない。

「で、では人払いをお願いします!」
「と言うわけだから、ブリジット嬢は下がってくれる?」

 フィル様の氷のような声が、執務机の横に立っていたブリジット様に向けられた。ブリジット様はハッと我に返り、私を睨みつけながらズカズカと足音を立てて扉へ向かう。

 ドアノブに手をかけたところで、フィル様が言葉を続けた。

「ああ、ラティの嫉妬心を煽ってくれてありがとう。君への嫌悪感を我慢した甲斐があった」

 ブリジット様は振り返ることなく、バンッと大きな音を立てて扉を閉めて去っていった。