「うーん、仕方ないね。ここは我慢するよ」

 そんなに私からキスさせたいのかと半分呆れながら、そのまま朝食を平らげていく。ほんのり苦味のあるサラダがクセになるおいしさだ。

「……儀式を追加するか」
「なにか言いました?」
「いや、なんでもないよ」

 そうして極々平和的な朝食は終わり、私はフィル様へ儀式となった口付けをして、それぞれの役目を果たすべく別れた。

 妃教育を受けるため歩いていると、やたら喉が渇く。水分もしっかり取ったはずなのにと思っていると、吐き気が襲ってきた。

 思わず立ち止まったけれど、吐き気は強くなり足がガクガクと震えてその場にうずくまる。手も震え始めそれが痙攣(けいれん)だと気が付いた。視界にはチカチカとした光が舞い、目の前に角のついた銀色の馬が一瞬だけ現れて消える。

 口渇、強い吐き気、手足の痙攣、幻覚——これは、毒症状だ。

 私の意識はそこでプツリと途絶えた。