ヒューレット王国の国王ハルバートであるわしは、ずっと耐え忍んできた。

 化け物のような我が子に怯え、国王としての采配すらまともにさせてもらえず傀儡王(くぐつおう)に成り果てていたのだ。わしの国王としての人生はあの化け物が隔離塔を出た日に終わりを迎えていた。
 それがどれほどの屈辱と絶望だったか、正しく理解できるものはいないだろう。

 そんなわしの現状に耐えに耐えてついに希望の光が見えた。

「まあ! 貴女がブリジットね! 本当に清らかで美しいご令嬢だわ」
「ふむ、其方ならわしの……いや、我が国の守りを任せられるな……!」

 目の前に静かに佇む侯爵令嬢ブリジット・オズバーンは、微笑みを浮かべ慈愛に満ちた瞳でわしと王妃ステファニアを見つめている。

 謁見室に差し込む光を浴びて、柔らかく輝くハニーブラウンの髪がサラリと肩を滑り落ちた。ルビーのような真紅に輝く瞳を細め、口元は優雅に弧を描き透き通るような声を発する。