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 グラシア侯爵の屋敷で一夜を過ごし、アレスと一緒に朝を迎えた。

 昨夜も例の如くアレスに愛をたっぷりと注がれて、穏やかな気持ちで目覚めることができた。朝食まで時間があったので、オークションが始まるまでどうしようかとアレスと話している。

「ずっとこのままふたりきりで過ごしたい」
「それは私もそうだけれど、それではここまで付き添ってくれるハイレット様に申し訳ないわ」
「……わかった。昼間は我慢するけど、夜は俺だけのロザリアでいて」

 アレスが夜空の瞳で私を見つめながら、珍しく甘えるように懇願された。

 羽織っただけのシャツから覗く逞しい胸板が否応なしに目に入る。そこから漏れ出る色香もあいまって威力が半端ない。

 そもそもアレスのお願いを断れる気がしない。私だって最愛の夫が喜ぶ顔を見たいのだから。

「わかったわ。夜は好きにしていいから、その代わり昼間は協力してね」
「へえ、好きにしていいのか? それは素晴らしいご褒美だ」

 そう言って、アレスは艶のある唇を私の左手の薬指に落とす。
 獲物を狙う目で「今夜が楽しみだ」と囁かれたから、朝から腰が砕けそうになった。