オースティン伯爵が契約を交わしたのは、あくまでもロザリア個人の話だ。ではそのオースティン伯爵が失脚したら、どうなるか?

 考えるまでもなく、また契約の結び直しが必要になる。より私たちに協力的な貴族をその後釜に据えれば、ロザリアはますます私に従うしかなくなるのだ。

「そうですな……帝国中の販路が手に入るのでしたら、この身を削ってでも尽力いたしましょう」
「明日の午前中に用意できるか?」
「ええ、実はすでにこちらに持ちしております」
「話が早くて助かる」

 グラシア侯爵が持ってきたイーグルアイは、採掘された中でも特に魔石の価値が高いものだそうだ。

 こんな石ころの価値はどうでもいいが、これでロザリアが私のものになるまであとわずかだと思うと気分がよかった。

「ククク……やはりロザリアは私の妻になる女だったのだ。そう宿命づけられていたのだな」

 その夜は久しぶりに満ち足りた気持ちで、深い眠りについた。