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 オースティン伯爵の屋敷へ来て、私は皇太子の立場を利用しロザリアとの関係は一歩近づいた。

 あれだけ国のためと考えろと諭したのだから、私を受け入れた方がよいとロザリアもそろそろ理解するはずだ。セラフィーナもアレスと距離を縮めているようだった。

 ところが夕食を終えてオースティン伯爵とロザリアの契約がまとまった途端、アレスと連れ立って部屋へ戻ってしまったのだ。

 私とセラフィーナも部屋に戻り今後の作戦会議をした後、それぞれ未来の伴侶の部屋へと向かった。

 ところが、セラフィーナが私の元へやってきてアレスの部屋には誰もいないと言う。嫌な予感がしてロザリアの部屋をノックしたら、アレスがだらしない格好で姿を現した。

 つい今しがたロザリアを貪っていたと堂々と宣言して、私の神経を激しく逆撫でる。
 自分の言いたいことだけ吐き出して、私の問いかけを無視して締め出された。

 いったいなんなんだ、あの男は!? 竜人だからなんだというのだ!!
 アレスひとりであれば、いくら超人的な種族だといっても帝国軍の精鋭にかかれば簡単に始末できるはず……そうか、そうすればよかったのか。