捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2

 鼻先が触れ合う距離で、ロザリアは先ほど追い返した女のことを口にした。確かにロザリアが来るほんの数分前まで、部屋の入り口で内心ではいやいや対応していたが、ここで尋ねるほどのことだろうか?

「いったい、なにを話していたの?」
「ほとんど聞き流していたけど、やたら散歩に行こうだのカフェに行こうだの誘われたな」
「え! へ、返事は……?」
「もちろん断った」

 そこでホッとするようにロザリアが短く息を吐いた。
 そんなに気になっていたのか? ……つまり他の女と接触している俺が心配になって来てくれたのか?

「ロザリア、もしかして俺が他の女に現を抜かすと思った?」
「違うの! アレスを信じていないわけではないのだけど……その……」
「じゃあ、他の女といると思って嫉妬した?」
「……嫉妬、したわ」

 その言葉に、ロザリアの涙ぐんだ深緑の瞳に、心が沸き立つ。
 あのロザリアが、嫉妬してくれた。嫉妬するほど俺を求めているのだと実感して、どれほど俺がロザリアを愛しているのか刻みつけたくなる。