ハイレット様は、またしても王太子夫妻としての義務を説いてくる。そんなのは言われるまでもなく、真摯に取り組んでいることだ。いったいなにを言いたいのか、苛立ちが募る。

「私のすべてを尽くして国へ貢献しています」
「本当に? その心も身体も、この髪の毛一本に至るまで国へ尽くしていると?」
「もちろんです。アレスを支え、ラクテウスのために尽くすのが私の役目です」
「それなら尚更、ロザリア様は私の妻になり、セラフィーナがアレス様へ嫁げば両国の絆はより深いものになると思いませんか?」

 これが目的だったのか。
 新婚旅行だと言っているのに、無理やり旅についてきて、なにかにつけては私とアレスの間に入ってきたのは。すでに結婚している他国の王太子夫妻にこんな茶々入れをするとは思っていなくて、その発想がなかった。

 だけど、ハイレット様はわかっていない。
 竜人のことも、番のことも、なにひとつわかっていない。