「だって、私にとってアレスは最愛だもの。当然でしょう」
「……ここが出先でなければ、ドロドロに溶かして甘やかしたのに」

 そう言って、私の髪を掬い上げて唇を落とした。
 アレスの激情と色気に当てられて、腰が砕けそうになる。

「おや、お嬢様。大丈夫ですか? 少しふらついているようですが」

 力が抜けそうになってなんとか踏ん張ったけど、すぐにアレスの逞しい腕に支えられた。
 アレスの右手が腰に回され、抱きしめられたようになっている。これではただイチャついているカップルにしか見えない。

「あのね、さすがに出先でこんなにくっついたらダメだと思うの」
「なぜ? 私はただお嬢様を支えているだけですが?」

 これは完全にいつものアレスだ。しかも私を翻弄する時のタチの悪い執事の顔になっている。だけど私も離れたくないと思っているのだから、どうしようもない。