「……確かに、竜王様ですものね。ダメとは言わなそうね」
「ええ。父上のことですから、ついでにお土産のリクエストくらいしてきますよ」
「ふふ、確かにね。ここはアステル王国とはなにもかも違うのよね」

 アステル王国では王太子妃になってから、家族とも接触を禁止されていた。その癖がいまだに抜けないようで、時々もたついてしまうことがある。ラクテウスに来てからもう三年も経つのだから、いい加減慣れなければ。

 アレスの言う通り、竜王様はとても寛大な方だから私をこの国に押し込めるようなことはしない。なによりもアステル王国という檻から解放してくれたアレスが、それを許さないだろう。

「お嬢様は思うがまま、やりたいことをすればよいのです。そのために私はいくらでも手を尽くします」

 アレスの夜空の瞳が煌めいて、私をじっと見つめてくる。その奥に秘めた激情を感じ取りながら、私は改めて自分の心に素直になろうと思った。

「わかったわ。お茶を飲み終わったら、竜王様にアポを取ってもらえるかしら? アレスと一緒に素材探しの旅へ出たいの」
「承知いたしました。最速の日時で約束を取りつけてまいります」

 王城の一角にある研究室で、私とアレスは心からの笑顔を浮かべた。