私はラクテウス王国の国王である竜王様より、魔道具開発の依頼を受けていた。
 以前、第二王子カイル様の番のジュリア様が極悪商人に捕まった際に、人探しの魔道具を開発した。その上位版として、操作する竜人の番を捜せる魔道具の開発を依頼されたのだ。

「なにかお悩みですか?」

 魔法を器用に使ってお湯を沸かしながら、アレスが尋ねてくる。その手際のよさに、いつものように見惚れながら答えた。

「悩んでいるというか、ここにある素材だけでは製作がどうしても無理なの」

 もう何週間も前から薄々気付いていたけれど、なんとかならないかと試行錯誤していた。これでも王太子妃だから素材探しのためとはいえ、国外へ出ることも簡単ではないだろう。

「おっしゃっていただければ、私が素材を調達してまいります」
「必要な素材の見当はついているのだけど、それと相性のいい素材も追加したいから自分で探したいの」
「それでしたら、一緒に素材探しの旅に出ますか?」
「そうしたい気持ちはあるのだけど……いくら素材探しが目的でも、王太子夫婦が揃って留守にするのは問題よね?」
「お嬢様、この国では、そんな狭量なことをいたしません。あの父上ですよ?」

 会話を続けながらもアレスの手が止まることなく、テーブルにお茶とお菓子が並べられていく。私の好きなフルーツティーの香りが漂ってきて、こんなさりげない気遣いに心が温まった。