「大変申し訳ございません。少々困ったことになっておりまして、アレス王太子殿下をお借りしたいのですが、どうかご一緒いただけませんでしょうか?」
「…………」
「アレス、私は大丈夫よ。クライブ国王が困っているならお助けしましょう」
「……ロザリアがそう言うなら」

 アレスは渋々といった様子でクライブ国王とともに会場へ戻っていった。
 さすが父上だ。うまくクライブ国王を使って、邪魔者を排除してくれた。これでゆっくりとロザリアを口説き落とせる。

「ロザリア様、このまま話を進めても?」
「そうですね、しばらく戻ってこなそうなのでお話だけさせていただきます」

 私は一歩、距離を縮めた。拳ひとつ分を開けて、ロザリアの隣に立ち手すりに身体を預ける。心地よい風が吹いて、自慢のプラチナブロンドを揺らしていった。
 ほんの少しだけ、感情を露わにして気持ちを伝える。

「やっとロザリア様との時間が作れました。ずっとお話がしたかったのです」
「そうですか。そんなに熱心にラクテウスとの友好をお考えただいていたのですね」
「……いえ、私は個人的にロザリア様と時間を共有したかったのですよ」