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 アレス・ラヴィ・ラクテウスはまったく邪魔な奴だ。
 せっかくいい雰囲気でロザリアとダンスを踊り終えたのに、あの男が現れて彼女の気持ちが逸れてしまった。もう少しで落とせそうだったというのに……。

 ただ、二曲続けてロザリアとダンスを踊ったから、周囲にもよいアピールになったはずだ。パートナーである婚約者のエルネスタはなにも言えないのか、ただ黙って俯いていた。
 こうなったら、バルコニーでロザリアとふたりきりになれるように手を回すしかない。

 私はバルコニーへロザリアたちを案内した後、飲み物を取ってくると言って一度会場に戻り父上に協力を頼んだ。
 少ししたらアレスだけ呼び出してもらうよう手配して、何食わぬ顔でバルコニーへ戻る。

「お待たせいたしました。おふたりともワインでよろしいですか?」
「ええ、もちろんです。ありがとうございます」
「ありがとうございます」

 アレスは先にワインに口をつけて、ロザリアに渡したものと交換した。まるで私が薬でも仕込んでいるかのような行動に怒りが湧き上がる。