そんなの気にする必要などないのに。
 自ら望んでいるのかどうかなんて、見たらすぐにわかるのに。

 そんな風にロザリアを連れ出したハイレットは無視して、安堵したロザリアの肩を抱き寄せた。

「それで、どういった条件でダンスに応じたんだ?」
「え? そんなことまでわかるの?」
「……何年ロザリアのそばにいると思っている」

 ここでハイレットに視線を向けると、悔しそうに眉を寄せていた。そして俺を睨みつけながら口を開く。

「ダンスを踊ってくださったら、ロザリア様の願いをひとつ叶えるとお約束したのです」
「ほう、なるほど。ロザリアのダンスには、それほどの価値があるということですね」
「そんなことないわ。両国が友好だと周知したくて、気遣ってくださったのよ」
「……ロザリアはそう受け取ったんだな」
「え? なにか違うの?」

 ハイレットの瞳から光が消えている。まあ、気持ちはよくわかる。俺だってロザリアと愛を交わすまで十年近くかかったのだ。それくらいロザリアは他者からの好意に疎い。

「まあ、よろしいでしょう。ではロザリア様の望みをお聞きしたいので、場所を変えましょう」

 そして俺たちはロザリアの願いを叶えるべく、ハイレットの先導でバルコニーへと移動した。