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「アレス様! こちらにいらっしゃったのですね!」
「……セラフィーナ皇女。なにかご用ですか?」

 ロザリアのためにシャンパンを取りにきたところで、嫌な女に出くわしてしまった。この女はロザリアの心に害しか及ぼさない害虫なので、口を利くのも面倒だった。

 だけど、今日はあいにくラクテウス王国の王太子として参加しているし、ロザリアの魔道具の販路拡大のために下手な態度を取れない。

 俺の態度が原因でロザリアの仕事を邪魔したくなかったからだ。まあ、言い方が若干端的なのは許容範囲だろう。話しかけるなと言わないだけマシだ。

「実は、お兄様がロザリア妃殿下にお話があるそうなので、その間はわたくしがアレス様のお相手をするようにと言われたのです! アレス殿下、よければ一緒に踊っていただけませんか?」
「……ロザリアとハイレット殿下がどのような話をすると?」
「わたくしはよく存じませんわ。でもしばらくお時間がかかるということでしたの。あ! もしよろしければ、バルコニーや庭園でゆっくりされますか? わたくしが案内いたしますわ!」