この世界の片隅にある小さな島に、ラクテウス王国がある。

 山の頂上に城が建っており、強固な結界が張られた国には、限られた種族しか住めない。
 そこには竜人と呼ばれる人智を超えた存在が住んでいて、王太子であるアレス・レヴィ・ラクテウスは私ロザリアの夫であり専属執事でもあった。

 アレスはもともと私がアステル王国の伯爵令嬢だった頃に出会い、専属執事としてずっと私のそばで支え続けてくれていた。
 その時は元夫のウィルバートに尽くし続けていたけれど、愛妾に子供ができたと捨てられて、心機一転、このラクテウスで暮らすことにしたのだ。

 驚いたことに私がアレスの(つがい)で、この国に来た途端、熱烈に求婚された。ずいぶん翻弄されたけど、九年も愛し続けてくれたアレスを受け入れた。番の契りを交わして私もまた竜人となり、この国の魔道具発展のために尽力している。
 アレスの愛がたまに暴走しそうになるけれど、そんな毎日がとても幸せだ。

「お嬢様、開発は進んでいますか? よろしければ少し休憩されませんか?」
「うーん……そうね、休憩しようかしら」
「かしこまりました。すぐにお茶の用意をいたします」