「ハイレットか。入れ」
「父上、お呼びと伺いましたが……なにかありましたか?」
「うむ、お前の配偶者について話がある。セラフィーナはまだか?」
「セラフィーナもすぐにまいります。しかし私の配偶者は以前にも言いましたが、ロザリア以外に考えられません」

 確かに私の平穏を守るためのキーパーソンは、ラクテウス王国の王太子妃ロザリアで間違いない。
 たかだか小国の伯爵家の娘だったにもかかわらず、魔道具の開発ができるからとアステル王国の王太子妃になり、我が帝国すらその技術力には敵わなかった。

 離縁したと聞いた時はロザリアをハイレットの妻にすれば、ますます帝国の未来は約束されると思った。
 万が一のことを考えてハイレットの婚約は維持したままロザリアの行方を探し出し、親書を送ったのに竜王には取り合ってもらえなかった。
 そうこうしているうちにあの女がラクテウス王国の王太子妃になり、どうにもできなくなってしまったのだ。

 話ができないのであれば、力づくで奪うしかない。我らはそうやって帝国を築いてきたのだ。
 いくら竜人が優れているといっても、我が帝国の知力と武力を全力でぶつければいい勝負になるはずだ。実際に暗部に調べさせたが、魔封じの腕輪が有効だと調べがついている。魔法を封じるだけでも、こちらが有利になるはずだ。