高級ホテルのスイートルームにそぐわない笑顔で、アレスがじりじりと距離を詰めてくる。獲物を狙う目は私を捉えて離さない。
 ソファーにあっけなく押し倒され、アレスの彫刻のような美貌が眼前に迫っている。

「そんなっ……! 今だって見えないところにたくさん花びらが散っているのに、これ以上増やすの!?」
「見えないから意味がないと気が付いた」

 どうしよう。このままアレスに身を委ねたら、明日の建国記念パーティーでドレスが着れなくなるわ!
 せめて恥ずかしくないような場所にしてもらえないかしら!? というか、この流れで明日の朝から動けるかも心配よね!?

「わっ……わかったから! アレス、おねが——」
「ロザリア。愛してる」

 その言葉に私が弱いとわかっていて、アレスはこういうタイミングで言ってくるのだ。

「……私も、愛してる」

 そしてやっぱり断れなくてそのまま散々愛を注がれ、アレスが満足するまで赤い花びらの跡をつけられた。