「まあ、ブルリア一族が失脚して喜んでいる貴族も多いですが。噂では元皇帝は帝都を出る前に圧政に苦しめられた人たちに囲まれ命を落とし、元皇后は人攫いに捕まって遠い異国へ売られ、元皇太子は物乞いをしているそうです。ああ、皇女は商会の息子に嫁いだそうですが、金遣いが荒くてすぐに追い出され行方不明だと聞いています。今でもブルリア一族の苦情が相次ぎ、その後始末でもティファニーは忙しくしています」

 しかし、今回ティファニー様がスレイド家に来れなかった原因が私であると気付きいたたまれなくなった。

「ごめんなさい、私のせいだわ」
「いえ、そんなことはありません。ブルリア帝国の皇帝が失脚するなど誰も予想していなかっことですから」
「……違うの、皇帝を排除したのは私なの」
「「「……は?」」」

 お父様とお母様、セシリオがありえないというような顔で私を凝視している。助け舟を出してくれたのはアレスだった。

「本当だ。あまりにもブルリア帝国の皇族が無礼だったから、俺とロザリアで排除したんだ。ああ、シトリン商会長も変えたから、なにか影響があるかもしれない」
「なにっ! シトリン商会まで!?」
「そうそう。皇帝のは僕も見ていたけれど、惚れ惚れするほど凛としていたし、あの冷徹な眼差しがたまらなかったよねえ」
「なんということだ……うちの娘が世界の歴史を変えてしまったとは……!!」

 お父様は両手で顔を覆っている。私がしでかしたことに心を痛めなければいいと思ったが、手遅れのようだ。