翌朝はたっぷり寝坊して、食事は部屋まで運んでもらいのんびりと過ごした。
 新婚旅行に行くのも急ぐことはない。竜王様のお墨付きで一カ月ももらえたのだ。アレスも一緒に寝坊したのが新鮮だった。だいたい私より先に起きて、さまざまな準備を進めている。
 食後の紅茶を飲みながら、アレスのくつろいだ様子を盗み見ていた。

「そういえば、今朝は執事じゃないのね」
「新婚旅行は夫婦で行くものだろう? 執事の方がよかったか?」

 なるほど、だから今朝は私と一緒にベッドで目覚めたのか。朝から大人の色気漂うアレスに、蜜月休暇を思い出したくらいだ。出先でもずっと夫のままなんて初めてかもしれない。
 執事のアレスはもちろんだけれど、私をぐいぐいリードしてくれるアレスだって愛おしくてたまらない。

「ううん、どちらのアレスも素敵だから大丈夫よ」
「そうか。では遠慮なく夫として振る舞おう」

 アレスはカップに入っていた紅茶を飲み干して、私を横抱きにする。

「えっ!? なに!?」
「なにって、夫として遠慮しないと言ったはずだが?」
「ええ、聞いたわ。だから旅行だし、どこか観光とか行くのではないの?」
「……その前に夫婦として、もっと大事なことがあるだろう?」