「ご、ご褒美って……?」
「今度は俺のお願いを聞いてくれる?」

 さっきまでの獲物を狙うようなアレスは身を潜めて、今度は捨てられる子犬のような目で私を見つめる。潤んだ夜空の瞳はいつもよりきらきらと眩しく、私が見上げるほど大きいのに見事に庇護欲をそそってきた。
 こんなアレスになんと言って断れるのだろうか。

「……はい」

 こんな風に確実に惚れた弱みをつかれたら、断れるわけがない。
 私よりも私を理解していてさすが最愛の夫だわ、と開き直るしかなかった。

 そうして湯船の中でも散々愛され、私たちの新婚旅行は始まった。