一瞬思考が停止した。
 アレスと、一緒に湯船に入る? なぜ?

「どうして、アレスが一緒に入るの?」
「どうしてって、もうロザリアと離れたくないからに決まっているだろう?」

 離れたくないのはわかる。だけど湯浴みまで一緒というのはどうかと思う。

「……アレス、湯浴みはひとりでもいいと思うの」
「ロザリア。今回の素材探しは忍耐の旅と言っても過言ではなかった」
「そ、そうね。アレスを付き合わせて申し訳ないと思っているわ」
「それなら——」

 アレスは私を抱きしめ、額から頬へ、そして耳へと口づけを落としていく。
 ぐずぐずに溶けそうになっている私に、耳元で甘く囁いた。

「必死に耐え忍んだ夫に、ご褒美をくれないか?」

 だけど私だって、この二年の結婚生活で多少の抵抗力はついているのだ。五回に二回はアレスの甘い罠から逃げ出せる。ここは流されてはいけない。頷くのは、念のためご褒美の中身を確認してからだ。