白い光が収まり、目を開けると高級そうな宿屋の前だった。
 夜空には煌々と月が輝き、優しい光を振りまいている。もう日付が変わりそうな時間になっていた。

「ロザリア。今日はもう遅いから、明日からゆっくり回ろう」
「あ、そういえばそうね。私は眠らされていたから、妙にスッキリしていて気が付かなかったわ」
「そうだと思った。眠りたかったら俺が手伝うから安心して」

 いや、それはむしろ眠れないのでは……!?
 なんて言ったら墓穴を掘りそうだったので、おとなしくアレスの後に続いた。

 こんな時間なのに爽やかな笑顔を浮かべ、手早く受付をしてくれる宿屋の主人に頭が下がる。用意された部屋は最上級とはいかないまでも、ゆったりと過ごせる十分な広さがあった。
 特に浴室が豪華で通常の一・五倍はある浴槽に、湯船に浮かべるための花びらや色とりどりのアロマキャンドルまで用意されている。

「ここはカップルや夫婦に人気のある宿屋なんだ。気に入ったか?」
「ええ、もちろんよ。とても素敵なバスルームだったわ。これならゆっくりとリラックスできそうね」
「それならよかった。では一緒に入ろう」
「入る? どこに?」
「決まっているだろう、湯船だ」