「ふう、これでいいわね。アレス、竜王様、ありがとうございます! これでスッキリしました!」
「そうか、僕で役に立てたようでよかったよ。あ、クライブ皇帝は送っていくし、ちょっと話もあるから今度こそ好きなだけ新婚旅行に行っておいで」

 竜王様からの提案はありがたいけれど、すでに一カ月近くラクテウスを留守にしているのだ。

「でも……」
「ロザリア、遠慮しないで行こう。実はずっと楽しみにしていたんだ」

 アレスが行きたいと言っている。そうだ、アレスは最初から新婚旅行を楽しみにしていたのだ。

「アレス……わかったわ。アレスがそう言うなら」

 私の最愛が望むなら、その願いを叶えたい。すっかり帰る気だったのに、アレスのひと言で私の気持ちもガラッと変わっていた。

「ではクライブ皇帝、ごきげんよう」

 浮き足たつ心を抑えて、皇帝となったクライブにカーテシーをしてアレスの腕の中に包まれる。

 アレスの転移魔法が発動した時に、竜王様とクライブ皇帝の会話が耳に入った。

「元皇族は反乱因子になりえるから、処理の仕方はわかってるよね?」
「わ、わかってます! はああ、マリアナになんで言えばいいんだ……」
「え、皇帝になっちゃった、でいいんじゃない?」
「……それでは軽すぎませんか?」

 というようなやり取りが聞こえたけれど、私は白い光に包まれて瞼を固く閉じた。