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 レッドベリルを手に入れたら、竜人である俺の転移魔法ですぐに新婚旅行に切り替えるつもりだった。

 ロザリアがもう帰りたいと考えているのはわかっていたが、せっかくの機会だし誰にも邪魔されず新婚旅行というものを経験してみたかった。

 しかし皇太子と商会長に引きとめられて、一晩お世話になることにしたのだ。だがそれが判断を誤ったのだと気付いたのは、晩餐の後だった。

 メイドが用意したお茶を口に含むと、わずかにピリッとした刺激と独特の酸臭がした。竜人は毒を飲んだところですぐに解毒してしまうので、飲んだところでどうということはない。

 メイドが逃げ出さないように、密かに結界を張ってからお茶を飲み干した。いつまで経っても変のない俺に、メイドがそわそわしはじめる。

「俺に毒は効かない。誰の差金だ」

 一瞬でメイドの顔が青ざめた。だいたい想像がついているが、情報が拾えればいいくらいに思っていた。