「怖いことなんてひとつもないわ。夜空の瞳も素敵だけれど金色の瞳だってとても美しいし、アレスはアレスのままよ」
「……ロザリア」

 アレスに抱きしめられ、そっと触れ合うみたいは口づけを交わす。やっとアレスの瞳から不安は消えて、いつも私を包み込むような大きな愛を感じられた。

「さあ、行きましょう! 私は準備万端よ!」

 そろそろバハムートが私たちの上空に到達する頃だ。私は魔銃を構えて敵に備える。

「このまま空中で応戦します。お嬢様、私にしっかりと腕を回してください」
「わっ……!」

 片手で軽々と抱き上げられて、慌ててアレスの首に腕を回す。

「ロザリア、もっと俺に抱きついて」

 耳元で甘く囁かれ、大きく鼓動が跳ねる。こんな時でも私の夫は色気がだだ漏れで、私の寿命を縮めにきているとしか思えない。

「アレス、わざと言っているでしょう」
「なんのことでしょうか?」

 でもそのおかげで強張っていた肩の力も抜けた。ホルダーに差していた魔銃も手にして、戦闘準備は整った。
 少しだけ黒い笑顔を浮かべたアレスは、ふわりと空へ昇っていく。