クリフにチャンスがやってくることはないが、今はうまく駒として動いてもらうために、反論はしなかった。

 シトリン商会を後にして、そうそうに集合場所の宿屋の前にやってきた。嫌々ではあったが、憎きアレスを始末できると思ったら最後を見届けるために同行するのも悪くない。

 山に入ってからは私とクリフでロザリアを囲い、アレスをガッチリとガードした。
 途中まではうまくいっていたのだ。

 昼を過ぎた頃だったか。アレスが魔物を片付けてくると言って、ものの十分ほどで戻ってきた。

 クリフも本当に魔物がいないとこぼしていて、確かにどれほど警戒しても野生の動物が出てくるばかりで魔物の気配すらしなかった。

 父の計画が失敗したかと、様子を見ながら山の中を歩き回った。今日は素材が見つからなかったので、予定通り野営することにしたのだが。

「なぜ私とクリフが同じテントなのだ!?」
「テントは二張りしかなくふたり用ですので、必然的に夫婦である私とロザリアが同室になると思うのですが?」
「しかし専属執事など使用人同然ではないか!」
「何度もお伝えしてますが、専属執事兼夫兼王太子です。立場も理由も正当ですので問題はありません」
「ぐぬっ……!」

 クリフも同様に詰め寄っていたが軽くあしらわれ、あえなくむさ苦しい獣人と同じテントで眠るはめになった。