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 レッドベリルを探すためとはいえ、皇太子である私が冒険者風情の真似をするのは抵抗があった。
 
 しかし出発前夜には隠密部隊から父の計画を聞き、ついにアレスを始末できると喜んだ。人の気配がしたので隠密部隊と別れ、部屋に戻ろうとしたところにロザリアが現れた。

 気分がよかったから、もうすぐ私のものになるとわからせようとしたらアレスに邪魔されたのだ。

 地面を這いつくばりながら、もうすぐ消えると知らないアレスを睨みつけた。
 この男さえいなければ、ロザリアは私のものになるのだ。この男さえ始末すれば……!

 その日は部屋に戻り、酒をあおって眠りについた。



 翌朝、レッドベリルの採掘に向かう前に、密かにシトリン商会長と密会した。

「クリフ、本当にアレスの排除に協力するのだな?」
「まあな。帝国の皇帝さんから店舗運営の許可を取り下げるなんて言われたら、従うしかねえだろ。それに、ロザリアの夫が消えてくれれば、オレにもチャンスは巡ってくる」

 父の計画ではレッドベリルの採掘で山に入ったところで、今までとは違う方法でアレスを仕留めるということだった。

 そのためには同行者である、シトリン商会長クリフの協力もあった方がより確実だ。
 しかしこの男もロザリアに好意を抱いていて、叶わぬ夢を見ているようだ。

「……まあいい、とにかく私に協力するのだぞ」