「それは、オレがレッドベリルの採掘ポイントを匂いで嗅ぎ分けられるからだ。このスキルがなければ、広大な山の中でレッドベリルを掘り当てるのは不可能に近い。そしてこのスキルを持っているのは、狼族だけだ」

 だからレッドベリルは希少で価値が高いんだよ、とクリフ様は続けた。
 確かにレッドベリルの出荷量が極端に少ないのは、採掘できる場所が都度変わるからだとも言われている。見つけた時に採取しなければ、次にいつ目にするかわからない。そんな不思議な素材だ。

 アレスに視線を向けると、穏やかに微笑みを返してくれた。
 これは、私の好きにしていいとう時の表情だ。

 本当なら、クリフ様とはあまり関わりを持ちたくない。ただでさえハイレット様が同行していて、面倒な状況だからだ。ここでさらに問題を増やすのはどうかと考えた。

 今ある素材で魔道具の開発を進められないか、そんな風に考えているとクリフ様が追い打ちをかけてくる。

「ロザリアさん、あんたが魔道具の天才開発者だと言うことはオレも知ってる。画期的で身近な魔道具をたくさん作ってきたし、このシトリン商会でも数多く取り扱っている」

 この話の流れは、私の経験上いい話になることがない。クリフ様は私がなにをしたいのか、すでに理解しているかのように追い詰めてきた。

「そこでオレがロザリアさんの商品を取り扱わないと言ったら、どうなるか想像できるか?」