「あっ、ごめんね。もう大丈夫だよ。それで話とはなんだい?」

 仕事を終えた竜王様は、私の斜め前にあるひとり掛けのソファーに腰を下ろす。アレスがお茶を用意してくれたので、緊張でカラカラに乾いた喉を潤すためにひと口流し込んだ。

 短く息を吐いて、現在の魔道具開発の進捗状況と必要素材について説明をする。竜王様は真剣な眼差しで聞いてくれた。

「なるほど……研究は六割程度進んでいるんだね」
「はい、竜人が番を見つける際に必要な情報は調べがついたのですが、世界中から探し出すところで行き詰まってしまったのです。これを解消するためには、検索範囲を拡大する素材と、人間の生体情報を拾い上げるための素材が必要です」
「ふむ……素材がわかっていれば僕の方で調達するよ」

 少し前までは素材が特定できればと思っていたけれど、今は別の目的があるからむしろよかったとすら思う。
 アレスとふたりで旅行なんて、私にとってはご褒美でしかない。

「それが同じような効果の素材が複数あり、それぞれの相性もみたいので直接私が探しに行きたいのですが、かなり時間がかかる可能性があります。それでも許可をいただけますか?」
「つまり素材探しの旅に行きたいってことだね?」
「はい、もし許されるならアレスとふたりで行きたいと考えています」

 ここまで言い切って、ごくりと唾を飲み込んだ。