だからいつでも感情の機微がみて取れるくらいの距離でそばにいる必要がある。どうしたらロザリアの側にいられる? 決して離れず一番近くにいる方法は?

 この八年で得た人間たちの社会で使えそうな知識を総動員して考えた。このチャンスを逃したら、次はないかもしれない。
 護衛はどうだ? いや、それだと時間が限られるか。侍従は? 確実にロザリアの近くにいられるか微妙だ。

 ああ、そうだ。ひとついいのがあるじゃないか。

「それでしたら俺は魔法も使えるし、護衛もかねてロザリア様の専属執事として雇っていただけませんか?」
「専属執事……?」
「はい、もし俺の出自が問題だというなら提示された条件で魔法契約を結びます。奴隷契約でも構いません。専属執事の技量が足りないなら一年くだされば、すべて身につけます」

 ここで引くわけにはいかない。ロザリアの気持ちを確かめるまでは、どんな手を使っても側にいるんだ。

「……わかったわ。あなた名前は?」
「アレスと申します」
「ではアレス。これからよろしくね」

 そのあと四ヶ月で執事教育を完璧にマスターして、俺はロザリアの専属執事になった。念のためと魔法契約しているが、俺がロザリアを愛することに関してはノータッチだったので問題なかった。