魔道具ならいつも持ち歩いているから、役に立てることがあるかもしれないとスルリと馬車道に降り立つ。
 声の方へ向かうと地面に人が倒れているのが目に入ってきた。タイラーは焦ってオロオロと歩きまわり、セインが倒れている人の怪我の状況を調べている。

「タイラー、何があったの? その方は怪我をされているの?」
「ロ、ロ、ロザリア様っ!! 申し訳ありませんっ!! そこの脇道から少年が出てきて倒れてしまったんです! どうしよう……大怪我してたらどうしましょう!?」
「タイラー、落ち着け。馬に蹴られた怪我じゃない。ただ倒れた拍子に頭を打っているかもしれない」
「だったら救命用の魔道具があるから大丈夫よ。それにしても……」

 そこに倒れていたのは私よりも幾分幼く見える少年だった。
 着ているものはくたびれて所々破けているし魔力は枯渇状態。髪は黒髪なのか濃いグレーなのかボサボサで埃にまみれていた。腕も足も枯枝のようで瀕死の状態だ。ひどい状況だったのが一目でわかる。

 もしかしたら倒れたのは私たちの馬車のせいかもしれない。そうでなくともこの少年をこのまま放っておけるわけがない。