すっかり大人しくなった男性たちをよそに、ここでもサライア様とお母様は終始なごやかにお話をされていた。最終的には魔道具の開発に必要な人員の派遣や、竜人だから採取できる貴重な素材の輸出まで話が広がり、互いに私益を生む内容でまとまった。
 竜王様とお父様は今後のための具体的な打ち合わせをすると言って執務室に移動していった。
 お母様もサライア様ともっと話がしたいとサンルームへと移り、応接室には私とアレスだけが残された。

「はあ、本当にどうしてこうなるのかしら?」
「少し肝は冷えましたが、スレイド伯爵にご報告できてよかったです」
「そういえばアレスはいつの間に王太子になったの?」
「それはお嬢様の手紙を読んだ後です。王太子妃になると書かれていたので立太子しました」
「え、そんな理由で!?」

 いいえ、違うわね。アレスのことだから、これは私の意図をわかったうえで逃げ道を塞ぐためにガチガチに固めてきたわね?

「はい、最悪私の王太子妃になればよろしいと口説くつもりでしたので。今更返上できないのでそれは諦めてくださいね?」

 やっぱり……! くぅ、そんな風にうっとり微笑んでも誤魔化されないんだから! 結局、私は王太子妃になるのね……まあ、ラクテウスのために働くのなら全然構わないけど。むしろ喜んで働くけれど。