いくら馬鹿な王族でも竜人の国と戦争する者はいない。人智を超えた力がある国と戦っても負けるのが明白だ。こちらから仕掛けなければ何事も起きないのだ、間違っても手を出すわけがない。
 竜王様はチラリと私に視線を向けた。

「ロザリア嬢、なんと言われてここにやって来た?」
「父と母を釈放してほしければ妻になれと、ウィルバート殿下に言われました。賢いお前ならわかるだろうとも」
「そんな事を……!」
「立派な脅迫じゃないか!」

 私の言葉にお母様もお父様も肩を震わせて怒っている。国王陛下を射殺さんばかりに睨みつけた。

「ロザリアッ! 何を言うのだ! 事実ではないことだ、訂正せんかっ!!」
「先ほどから黙って聞いていれば……俺の番を馴れ馴れしく呼び捨てにするな。そして口の利き方に気をつけろ。死にたいのか?」
「ヒィィッ! 申し訳ございませんっ!」

 国王陛下の私への態度にキレたアレスが、地を這うような声で釘を刺す。竜王様の目が一瞬だけいつもの感じに戻ったけど、すぐに王としての光を取り戻した。