絶望的な状況にギリッと奥歯をかみしめる。
 耐えるしかないのか? 何か、何か他に方法はないのか?
 懸命に頭を働かせても、近づいてゆく寝室に気ばかり焦って考えがまとまらない。ウィルバート殿下の手は私の腕を痛いほどつかんでいて、振り解くどころかギリギリと締めあげる。

「痛っ……!」
「お前を逃さないためだ、少し我慢しろ」

 振り返りもせずに寝室のドアを開けて、ウィルバート殿下は私をその中に放り込み後ろ手に鍵をかけてニヤリと卑しい笑みを浮かべた。後退りながら、なんとか気を変えてくれないかと声をかける。

「ウィルバート殿下、私は純潔のまま嫁ぎたいのです。どうかご勘弁を」
「だから構わないと言っているだろう。もう回りくどいことは止めにしたのだ。お前を抱いて正真正銘ボクのものにするんだ」

 ズカズカと大股で歩み寄ってくるので、部屋の奥へと逃げるけれどすぐに壁にたどり着いてしまう。いよいよ逃げ場がなくなり、ウィルバート殿下に背を向けて身を守るように自分を抱きしめた。

「ウィルバート殿下っ! お止めください!!」
「すでに結婚式で口づけを交わしただろう? 恥ずかしがることはない」