ああ、もしかしてこの一週間ほど今までにないくらい尽くしたから、そろそろ気持ちを向けろと言いたいのかしら? その前に私がどれほど尽くしてきたのかお忘れになったのかしら? そして最後には愛妾を懐妊させて追い出した事もお忘れなのかしら?
 まあ、その愛妾と側近たちは失脚したと、黒い笑顔のブレスに聞いたけれども。

 私の冷え切った視線に気がついたウィルバート殿下は、席を立って力任せに私の腕をつかみあげる。そのまま引きずるように王太子の部屋と繋がる寝室へ向かって歩き出した。ドクリと心臓が嫌な音を立てる。

「これだけ尽くしてもわからないなら、お前の身体からボクのものにしてやる」
「それは……婚姻するまでは清い身でないといけませんわ」
「ふんっ、どうせもうすぐ準備が整うのだ、あと数日の違いだろう。父上も母上も子を望んでるから問題ない」
「ウィルバート殿下、お戯れはおやめください!」
「戯れじゃない。お前はボクのものなんだ」

 ダメだわ、もう話を聞いてくれない。
 まだお父様とお母様の安全が確保できていない状況で、自決しても意味がない。思いっきり抵抗したいけど、それでこれ以上気分を損ねたら……私のわがままで両親を危険にさらせない!!