つい先ほどアレスをずっと拘束していた主従の魔法契約を解除した。戻って来れらる保証がなかったから、アレスを自由にしたのだ。それから少しだけ時間をもらって手紙を書いた。

「セシリオ、もしアレスがここを訪ねてきたらこの手紙を渡してくれる? そして自由にしていいと伝えてほしいの」
「姉上! それはどういう意味ですか!?」
「アレスに私の指示を伝えてほしいだけよ。実は魔道具もたくさん持ってきているから、なんとかなるわ」

 悔しそうに俯くセシリオはそれ以上の反論をしてこなかった。色々と飲み込んで納得してくれたみたいだ。だけど今度はブレスが食いついてくる。

「ロザリア様、私があの王子を引きつけますので、このままお逃げください。アレスを頼ればどうにかしてくれるはずです」
「ブレス、ありがとう。でも今はお父様とお母様の安全確保が最優先よ。いざとなったらアレスを頼るから心配しないで」

 今にもウィルバート殿下に飛びつきそうなセシリオとブレスをなだめて、アレス宛の手紙を託す。かなり悪辣な内容だから、きっとアレスもこの手紙を読めば私のことは諦めて忘れてくれるだろう。
 アレスを傷つけるような言葉の数々に心が折れそうになったけど、これでもう私の大切な人たちを巻き込まなくて済むはずだ。

 お父様とお母様がここに戻ってくるまでは下手な行動はできないから、大人しく従うしかない。上機嫌のウィルバート殿下は転移の魔道具を発動させて、私とともに白い光に飲み込まれた。