「ウィルバート殿下、お離しください。今は婚姻関係ではありませんので」
「そんなこと気にせずともよい。ロザリア、ボクは迎えにきたんだ。やり直そう」
「意味がわかりませんわ。私は離縁されて城から去ったのです」
「だからそれは間違いだったのだ。私の伴侶はロザリアしかいないと気づいたんだ。このまま城に戻ろう」

 何を言っているの? あれだけ私を邪険にして都合よく使っておいて、今更やり直そうですって!? なんて身勝手な……!!

 言い返したくなるのをグッと堪えて、肩に乗っているウィルバート殿下の手を払い除けようとした。でもその手をつかまれて、もう片方の手で顎を持ち上げられる。強制的に視線を絡み合わせたウィルバート殿下は、いやらしい笑みを浮かべて私に告げた。

「ロザリアが王城に戻ってくるなら、君の両親はすぐに釈放する。君は賢いからわかるだろう? さあ、城に戻ろう。ボクのロザリア」

 それで私はすべてを悟る。これは王家が仕組んだものだったと。私を王城に連れ戻すために仕組んだ罠だったと。
 だけど私はその言葉に逆らえるだけの手札を何も待っていなかった。