真っ白な魔道具の光が収まると、懐かしい伯爵家の扉が目の前にあった。転移の魔道具は膨大な魔力を使うため、また使えるようにするためには魔石の交換が必要になる。
 そっと魔道具を収納ポーチに戻して、半年ぶりの屋敷へと足を踏み入れた。

「ロザリア様!?」
「ブレス、久しぶりね。大変だったでしょう。私のせいなの、迷惑をかけてごめんなさい」
「違います! そのようなことは決してありません。きっと何か行き違いがあったのでしょう」
「セシリオはどうしているの?」
「はい、ご案内いたします」

 屋敷の中はいつもより静かではあったけど、変わらず手入れが行き届いていた。案内されたのは父が使っている執務室だ。
 ブレスがノックして扉越しに声をかける。

「セシリオ様、ロザリア様がお戻りです」

 その言葉に反応するように、勢いよく扉が開かれた。
 嬉しそうで泣きそうなセシリオが姿を見せる。溌剌とした瞳は不安に染まっていて、私がこんな顔にさせたかと思うとギリギリと胸を締め付けられた。