『本当に殿下に尽くしていた方がどなたなのか、よく考えてください』

 そう言い残して宰相は頭を下げて執務室から去っていった。またひとりになったボクは、目の前に置かれたかつての友と婚約者の行く末に目を通していく。
 読み進めていくほど反吐がでる内容だった。
 ボニータはハルクとゴードン、それから男爵家に出入りしていた商人とも関係を持っていた。それは王立学院の頃からだ。何も気が付かなかった自分に笑いが込みあげる。

 ボクが帝国に行っている間は寂しかろうと、あえてハルクもゴードンも残していったがこれ幸いと楽しんでいたようだ。ハルクとゴードンは自身でも避妊薬を飲んでいたのと、関係を持ったタイミングからして出入りの商人が父親だろうと書かれていた。いずれも子が生まれればはっきりする事だ。
 そもそもボニータがわざと懐妊して離縁するという計画も、もとはファンク男爵が考えたものだそうだ。

 ボニータたちは牢屋でも喚き散らして三人とも独房に移されたと記されていた。この短時間で移されるとはよほどの醜態を晒したのだろうが、もう塵ほども興味がわかなかった。
 ハルクとゴードンはふたりともボニータに唆されただけだし、王太子の命令で寂しくないように相手をしていただけだと供述していた。相手をするのに関係をもつなど裏切り以外のなんだというのだ。